The Dabsong Conshirtoe

技術系の話を主にします。

管理職のためのエラスティックリーダーシップ

エラスティックリーダーシップという本を最近読んだのですが、ここ最近読んだマネジメント系の書籍の中では最もしっくりきました。

目標が自己組織化されたチームである点は自分の職場の目指すところですし、3つのモードとそれごとのリーダーシップ、という図式も単純明快でわかりやすく、実践で活かしやすいと思いました。 

 

エラスティックリーダーシップ ―自己組織化チームの育て方

エラスティックリーダーシップ ―自己組織化チームの育て方

 

 

 ただ、この本は基本的には現場のマネージャー向けのプラクティスとして書かれていると思いますが、私が担当しているVPoEのような、複数のチームや組織全体を見るいわゆる管理職的な人にとってはどのように活かせるのだろうかと考えをめぐらしながら読んでいました。

 

本書ではその辺りについて、第10章「管理職のためのマニフェスト」で軽く触れられており、モードごとのプロジェクト、チーム、個人に分けて説明されています。ここでは、それを参考にしつつ、評価育成や組織編成といった管理職の行う仕事の観点(と私個人の経験)からまとめてみました。

 

ここでの管理職の定義

  • チームリーダーの上長にあたり、開発チームに直接的な影響力がない
  • 複数のチームを管理する立場にあり、その規模は10名〜50名程度
  • ミッションとして、ラインの管理や、評価、育成、採用の制度設計といった組織づくりがある

 

活かせるであろうポイント

  • チームリーダーの支援、育成、評価の指針として
  • 採用、育成、評価制度設計の指針として
  • リーダー、メンバーの成長を支援する組織編成の指針として

 

チームリーダーの支援、育成、評価

管理職かそのチームやリーダーの状態確認のフレームワークとして、もしくはチームリーダーに、自身のチームの現在地の確認と将来的なプランを計画する手助けとして、エラスティックリーダーシップにおける3つのモードの概念が利用できるでしょう。

 

例えば、チームが日々のタスクをこなすのが精一杯で、中長期のプロダクトロードマップを見越した技術プランが練れていなかったり、なかなかメンバーのキャッチアップが進まずチームの力が上がってこないようなケースがある場合、

  1. チームがサバイバルモードにいるという共通認識をリーダーと合わせる
  2. 指揮統制型のリーダーシップを発揮して、チームを学習モードへ移行させるように指導する

という方向へ導くことが必要です。

 

学習モードに導くには時間の捻出が必要ですが、プロダクトスケジュールの見直しやチーム構成の変更などリーダーの範疇を超える対応が必要な場合は、管理職が手を打つ必要があります。(本で援護射撃と表現されているのはこのようなことかなと思いました)。

また、チームが良くない方向に進んでおり、品質やスケジュール面でのリスクがある場合、本書10.2.1「サバイバルモードのプロジェクト」に記載の通り、リーダーやチームにそのリスクを説明して対策すべきです。

リーダー自身がサバイバルモードにいる自覚がない場合には気づかせる責任も管理職にはあります。

同じように、学習モードから自己組織化モードへチームを持っていけるようなコーチングなりフィードバックなりが、管理職の仕事となってきます。

 

採用、育成、評価制度設計の指針

上記の直接的なコーチングと並行して、メンバーを含めた育成や評価の制度面にエラスティックリーダーシップのエッセンスを含めることで、組織全体の改善につなげられるでしょう。各チームへの間接的な支援です。

メンバーの評価指針はさまざまな観点があると思いますが、チームビルディングにどれだけ良い影響を与えられているか、という点が一つあると思います(チームビルディングはリーダーだけの責任ではないと考えています)。

チームを自己組織化モードに持っていけるような取り組みを率先して行えているメンバーや、サバイバルモードを抜け出そうとする行動をするメンバーを高く評価することで、組織全体を自己組織化チームを目標として動いてもらえるようにします。

バス因子を除こうとする行動や、プロジェクトの進行管理や仕様調整などをリーダーに頼らずともできる or できるようになる、という行動もそうです。

 

リーダー、メンバーの成長を支援する組織編成

管理職としては、ある特定のチームだけでなく、すべてのチームが自己組織化モードへと移行できるようにもっていくのが望ましいはずです。

ただ、特定のチームは現状のメンバー構成ではその状態に持ってくのが困難な場合もあります。

管理職が組織人事の権限を持つならば、チーム編成を変更することでその問題に対処します。

例えば、人材流出やプロジェクト状況の大きな変化によりサバイバルモードへと移行してしまったチームには、経験豊富なリーダーを異動や採用により投入し、指揮統制型のリーダーシップでサバイバルモードを脱出してもらう。

また、それとは逆に、チームが自己組織化モードに移行し、リーダーの仕事量が減っている場合、思い切ってリーダーを剥がし、別プロジェクトに挑戦してもらう。うまくいっているチームの体制変更は迷いますが、リーダーが安全地帯から出られるようにする事でリーダーにとってもチームにとっても今以上の成長環境を提供できるはずです。

 

自己組織化チームにおけるチーム体制変更の体験談

私個人の経験ですが、以前に自己組織化されたチームのリーダー務めていたことがあります。もちろん最初からそうではなかったのですが、2年くらいチームの運営をしたころにはメンバーは自立し、私の役割は大枠でのファシリテートとレビュー、技術的な改善を率先して行う、くらいでした。次期のリーダー候補もしっかり成長しており、正直自分がいなくても回るだろうなという感覚が強くありました。

 

そんななか、次期リーダー候補メンバーに更なる刺激を与えたいという思いと、自分自身も新たなプロジェクトに挑戦したいという思いからチームリーダーをメンバーに譲り、私は新規プロジェクトのリーダーとなりました。

 結果、もとのチームはチーム編成やビジネス環境の変遷はありながらも新リーダーのもと安定してプロダクト開発を続けられており、私自身も新製品の立ち上げや組織作りなどに挑戦できるようになり、お互い、ひいては組織全体にとって良い人事になったなと思います。

 

まとめ

管理職におけるエラスティックリーダーシップとは、リーダーに対するコーチングを基礎とした個々のリーダー/チームのモードに応じた支援と、育成評価の制度設計や採用計画などのシステム作りにより、組織全体のモードを管理することにあるのかなと考えました。